写真1 斜めに生えてしまった親知らず(左)とそのX線像(左)
一番後ろの奥歯(第三大臼歯)が親知らずで、智恵がついた頃に生えてくることから智歯(ちし)とも呼ばれています。英語ではwisdom toothになります。他の永久歯は通常6〜12歳の間に生えますが、生えてくる時期がこれよりずっと遅く(概ね10代後半から20代にかけて)、生えてきたのを親が知らないことから親知らずと呼ばれるようになったといわれています。すべての人に生えてくるわけでなく、上下左右4本生えたり、1本しか生えてこなかったり、また、全く生えてこない方もいます。
現代人は食生活の変化から顎の発達が退化傾向にあり、親知らずが生えるスペースが確保できず、正常に生えるケースが少なくなっています(写真1)。
〜かしま歯科医院ミニ情報〜 |
存じですか? 親知らずはむやみに抜かず、残しておくと移植に使えます!! |
【症例1】は左下顎の親知らずによって手前の歯の根が吸収してしまいました。
その歯を抜歯し、同部に奥の親知らずを移植しました。
歯根が溶けてしまい抜歯となりました左下の親知らずによって手前の歯が悪くなったので、抜歯して奥の親知らずを移植したところです。
【症例2】は親知らずではなく歯並びが悪くて後ろ側に生えていた上顎の前歯を、左下顎に移植したものです。
歯の移植は高度の技術を要しますが、機能していない歯を用いること・保険適応もあることから有益な治療の一つです。 |
写真2 親知しらずだけでなく、手前の
第二大臼歯までむし歯に!
中途半端な生え方をしている親知らずは食物のかすが溜まりやすく歯ブラシでも清掃が難しいため、むし歯や歯周病になりやすくなり、また智歯周囲炎という親知らずの炎症を起こして化膿したりする厄介な存在になってしまいます(写真2)。
また、 支えがないと、歯は前方へ進もうとする性質があります。まっすぐに生えず前に傾いている親知らずは、すぐ前の第二大臼歯を押していることになり、歯並びを悪くしてしまうことがあります。
そのため、歯列から外れた場所に生えたり、繰り返し炎症を起こしたり、反対側の歯肉や粘膜を噛んでしまうようなケースや大きなむし歯になってしまった親知らずは抜歯が必要となります。その場合、若い方が傷の治りが早い、年齢とともに親知らずと骨の癒着がすすみ抜歯が困難になる、高血圧や心臓病など全身的な疾患があると抜歯に伴う危険性が増す、などを考慮するとできるだけ若いうちに抜いておかれることをお勧めします。特に女性の場合には、妊娠中に親知らずが炎症を起こすこともしばしばあり、治療に難渋することがありますので、妊娠前に親知らずを抜いておかれといいでしょう。
親知らずは必ず抜歯しなければいけないということはありません。きちんと正しい位置に生えて機能していればほとんど問題はありません。前述のように、周りに害を及ぼすような親知らずは抜歯した方がいいのです。
ところで、親知らずも時には非常に重宝することがあります。むし歯などで抜いてしまって歯がないところや、残せないようなひどいむし歯があって抜歯をしなければならない場合、ある程度まっすぐ生えている親知らずであれば、そこに親知らずを移植することができます。これを自家歯牙移植といいますが、謂わば親知らずのリサイクルです。それまでは役に立たなかった親知らずが、移植することで立派に機能するようになります。しかし、自家歯牙移植にはいろいろ条件を満たさなければならない事が多く、誰にでもできる訳ではありません(右図)。
親知らずでお困りの方は、かかりつけの歯科医にご相談ください。