むし歯や歯周病そして前回の顎関節疾患の他、お口の粘膜の病気、口腔粘膜疾患も歯科で扱います。
皆さんも口内炎ができたり、誤って舌を噛んで潰瘍になってしまったりした経験があるかと思いますが、これらも口腔粘膜疾患の一部と言えます。
腔粘膜の疾患は局所的なものから、全身疾患の部分症状として生じるもの、アレルギーに起因するもの、また、良性のものだけでなく悪性腫瘍(癌)の場合もあり、その病態は複雑多岐で診断が難しいケースもしばしばあります。
写真1(左) アフタ性口内炎
写真2(右) アフタ性口内炎
写真1、2は舌に生じたアフタ性口内炎で、比較的頻繁にみられるものです。副腎皮質ホルモンの口腔用軟膏の貼薬により早期に治癒します。食事がしみたり、触ると痛みが出たりすることが多いので、刺激物は避けてください。
写真3(左) 下唇に生じた粘液嚢胞
写真4(右) 舌に生じた粘液嚢胞
写真3は下唇、写真4は舌の裏側にできた粘液嚢胞(ねんえきのうほう)です。半球状のやわらかい腫脹としてみられ、これは誤って噛んでしまったり、外傷や炎症などによって、主に小唾液線の出口が損傷されて分泌物が貯留することによって生じるもので、内容物は唾液です。粘液嚢胞は表面が薄くて破れやすく、一度は治ったようになっても再発を繰り返すことが多く、そのような場合は切除摘出します。
写真5 妊娠性エプーリス
エプーリスとは歯肉に限局的に形成された良性の線維性組織の増殖のことで、妊娠によって歯肉が増殖するものを妊娠性エプーリス(写真5)と呼んでいます。ほとんどが分娩後に自然消失します。妊娠中はホルモンバランスの変化によって歯肉が腫脹しやすくなるので、より一層お口のケアが必要になります。
写真6 脂肪線維腫
写真6は奥歯の歯肉に生じた良性腫瘍です。このように歯の根の部分が膨らんでくる症状は、原因が歯(歯根の先端にできる膿か歯周病)であることがほとんどですが、非常にレアなケースとして良性腫瘍であった症例です。原因は全く不明で、切除して病理検査によって確定診断できました。 半年に一度の定期健診の際に、歯や歯肉だけでなく舌や粘膜の状態についても、かかりつけの歯科医にチェック・精査してもらうことも必要ですね。
写真7 頬粘膜の扁平苔癬
写真8 舌の扁平苔癬
写真7、8はそれぞれ頬の粘膜と舌に生じた扁平苔癬(へんぺいたいせん)と呼ばれる粘膜病変です。頬粘膜や舌に乳白色のレース状線条として見られることが多く、自覚症状は少なくて多くは違和感程度ですが、時に摂食による刺激痛を伴います。ウイルス説、 アレルギー説、肝機能障害説など種々の説が唱えられていますが原因は明確でなく、口腔を清潔に保ち、副腎皮質ホルモン剤の貼薬といった局所療法を行うことで症状の改善がみられます。
写真9 治療に用いたリンガルアーチ
胃腸だけでなく、口腔粘膜にもポリープが生じることがあります(写真9)。
誤咬といって誤って咬んだり、種々の刺激によって生じやすいと言われています。
写真10
写真11
写真10、11、12、13は粘膜に白斑が生じる白板症(はくばんしょう)と呼ばれる病変です。
歯肉や頬粘膜、舌や口蓋の粘膜に限局的に、または広汎にみられることがあります。白板症は癌が発生しやすい状態に組織が変化した「前癌病変」といわれ、5〜10 % が 悪性化(癌化)すると考えられています。
写真12
写真13
不良補綴物(合わない冠や入れ歯)による刺激や、喫煙などが原因と考えられていますが、はっきりした原因は明らかではありません。悪性化しないよう早期の対応と十分な観が必要です。写真12、13は切除後の病理組織検査によって、極めて初期の癌細胞が発見された症例です。
なかなか治らない口内炎や潰瘍、歯肉や粘膜が白くなるような(時として赤くなるような)変化が見られた場合は早めの受診をお勧めします。
当院では、新型コロナウィルスやインフルエンザ等の感染予防および拡散予防のために、次のような対応を徹底しています。
1)歯科器具・器材の滅菌・消毒
2)患者様ごとのユニット(歯科の治療台)の消毒
3)治療ごとに新しい手袋の使用
4)口腔外バキュームによるエアロゾルの吸引
5)強力な空気清浄機によるクリーンな環境の提供
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