歯を失った部位には、特に多数(すべて)の歯を喪失した場合には通常、義歯(入れ歯)が適用されます。すべての歯が喪失した場合には総義歯を、数歯〜多数歯欠損の場合には部分義歯が装着されます。
総義歯はすべての歯を失ってしまった状態の顎に装着するもので、歯が無いために顎の粘膜によって維持されます(写真1、2)。そのため顎(歯肉や粘膜)の形の良し悪しにより義歯の具合は左右されることが大きいと言えます。
歯科医の腕や経験、作り方によるところも大きいということはもちろんですが…。保険の総義歯は約1万円で作成することができます(上下どちらか片方の価格です)。
写真4 上顎の3本欠損の部分義歯
1本欠損の部分義歯 |
歯が残っているケースでは部分義歯となります。残っている歯の本数や欠損の様式によってさまざまな形態の義歯になります(写真3、4)。歯にかけて義歯を支えるバネの金属や形、バネを付与する部位やバネをなるべく目立たないようにする配慮等によって種々の設計が考えられるのですが、これらは残っている歯の状態や部位によって決まります。歯周病に罹患していてグラグラする歯にバネをかけても、その歯が長持ちせず、義歯を修理したり作り変えなければならなくなってしまいますよね。
保険適応は無くなりますが、一部に金属を用いることで快適な義歯を作製することができます(写真5)。これは金属床義歯と呼ばれ、次のような長所を有します。@
薄くて違和感が少ない、A丈夫で壊れにくい、B金属部分は汚れにくく清潔を保ちやすい、C食べ物の温度(熱い・冷たい)がよく伝わって食事がおいしい
金額は使用する金属の種類(チタン、コバルトクロム、ゴールド等)や義歯の大きさや形態によって大きく異なります。
また、昨今では磁マグネット石を用いて義歯をピッタリと吸着させる装置も改善され、良好な成果をあげています。
残っている歯根にキャップのような金属を取り付け、義歯に埋め込んだ磁石によって、しっかりと固定されます(写真6、7)。
さらに、最近ではバネを使用しない部分義歯も応用されています(写真8)。軟らかく弾力があるピンク色の部分によって歯に維持を求めるので、金属のバネが見えず審美的です。ただ、周囲の歯をかぶせ直したり、歯を抜いたりすると、難しいケースもあります。
入れ歯のお手入れについて
義歯はレジンという樹脂からできており、吸水性があるため汚れや細菌が付きやすく、また、臭いも吸着されやすいので、清掃を怠ると口臭の原因になります(写真9)。
さらに義歯性口内炎や口腔カンジダ症を引き起こしたり、部分義歯の場合は、バネ等のかかっている歯や残っている歯に悪影響を与えてしまいます。義歯のピンク色の部分の樹脂はキズがつきやすいので、歯磨き粉を使用して擦ってしまう等の間違ったお手入れをして表面をキズつけると、さらに細菌が付着しやすくなります。
写真10では、下顎の義歯の前歯の裏側に歯石がたっぷりと付着してしまっています。歯が無くなってしまっても、お口の中の細菌の代謝産物は義歯に付着してしまうのです。歯磨きを毎日するように、義歯も毎日のお手入れが必要です。できるだけ毎食後に、義歯をはずして清掃するようにしてください。
義歯のお手入れについて順番に説明しましょう。
1.義歯をはずして水洗いをする。
まずは食べかすや、表面の唾液を洗い流します。
2.専用のブラシを用いて義歯を清掃する(写真11)。
義歯を掃除する際は歯磨き粉は使用しないでください。
研磨剤が入っているので、樹脂の表面にキズをつけてしまいます。
研磨剤が入っていない義歯専用の磨き剤もあるので、使用すると効果的です(写真12)。
3.義歯の洗浄剤に浸ける(写真13)。
洗浄剤は磨いても取れなかった汚れを除去し、殺菌消臭効果もあります。
5〜20分ほどで洗浄されますが、頑固な汚れには一晩漬けておくのが効果的です。衛生面も考慮し、就寝中は義歯をはずして、お口の粘膜を安静にさせることも大切です。
義歯にはカンジダが付着しやすく、口の中は栄養が豊富で、適温、高湿度とカンジダの生育に適していますので、義歯清掃を怠ると義歯はカンジダの温床となります。そしてひとたび免疫力が低下すると、口腔カンジダ症から全身的なカンジダ症へと進展してしまいます(写真14)。洗浄剤を毎日使用することで、効果的な予防が期待できます。
4.十分な水洗いをして、洗浄剤の成分を洗い流してから、義歯を装着する。
毎日のお手入れこそが、義歯を長持ちさせるコツです。
清潔にと思って義歯を高温のお湯で洗ったりしないでください。80℃以上のお湯は変形の原因になります。残っている歯のある方は、歯磨きと同時に寝る前には必ず義歯のお手入れをお願いします。また、快適に使い続けるために、半年に一度は“かかりつけ歯科医”で定期検診を受け、義歯とお口をチェックしてもらいましょう。
当院では、新型コロナウィルスやインフルエンザ等の感染予防および拡散予防のために、次のような対応を徹底しています。
1)歯科器具・器材の滅菌・消毒
2)患者様ごとのユニット(歯科の治療台)の消毒
3)治療ごとに新しい手袋の使用
4)口腔外バキュームによるエアロゾルの吸引
5)強力な空気清浄機によるクリーンな環境の提供
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